『グローバル経営入門』感想・概要レビュー|世界で成長する企業になるための考え方とは

世界で成長する企業になるためのナショナル経営論

「MADE IN JAPAN」は高品質でよい製品であるとして、日本は小さな島国でありながらモノづくり大国として大成しました

しかし、デジタル時代を迎え、世界のマーケットは大きな変革期に入り、日本のこれまでのやり方が通用しなくなっています

今、日本に求められるナショナル経営とは何なのか
『グローバル経営入門』を読めば、その答えが見えてくるでしょう。


グローバル経営入門 (マネジメント・テキストシリーズ)

グローバル事業を行う人は読むべき1冊

経済と経営の多方面からの研究による分析をもとに、組織の意思決定から、研究開発、生産・販売まで、グローバル経営に必要な内容を包括的に紹介している本です。

学術的な裏付けをもとに生み出されたこの本には、グローバルビジネスにかかわる人が知っておくべき幅広い内容が網羅されています。

著者は「メタナショナル経営」の提唱者

著者は、浅川和宏氏。国際経営学、グローバル・イノベーション論の研究者であり、慶應義塾大学大学院経営管理研究科準専任講師

日本興業銀行に入社後、海外に渡り、ハーバード大学ビジネススクール経営学修士、欧州経営大学院経営科学修士、INSEAD経営学博士を取得している。

こんな人におすすめ
グローバル企業の経営者・幹部、海外支店の人材
経営学部の学生

Ao世界上位の日本のグローバル企業との取引があり、世界で活躍する投資家やコンサルタント、外資系企業の日本誘致を支援するメンバーに取材を行ったことがあるAoが、独自目線で『グローバル経営入門』をご紹介します。

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日本に求められる過去からの脱却

デジタルコンテンツ戦略が主流となってきた2000年代。著者は早くから、現在に通じる「日本のグローバル経営には変化が必要」という研究を進め、普及活動を行っていきた人物です。

それでは、過去の日本のグローバル戦略と、これから求められるナショナル経営とはどういうものなのでしょうか?

世界のマーケットの変化と日本

これまで日本では、自国で優位性がある事業(半導体や自動車など)を行う企業が、国内での長所を生かしてグローバル展開し、成長していきました

しかし、デジタルコンテンツ時代により世界のマーケットが大きく変化すると、これまでの日本のグローバル戦略では、収益を上げ続けていくことは難しくなったのです。

そこで著者は、日本企業が取り入れるべきグローバル経営の戦略論を提唱しています。

グローバル経営の戦略論

この本で紹介されているグローバル経営戦略論をざっくりというと、「今後のグローバル展開は、その国独自の知識や技術を収集し、それを経営に生かすことが必要」ということです。

具体例で分かりやすく紹介しましょう。

北欧の小さな国が世界的携帯キャリアになった理由

みなさんも聞いたことがあるであろう携帯電話会社の「ノキア」は、フィンランドの企業です。

国土は日本同様小さく、携帯電話技術が特に発展してい

る国でもありません。

.

ですが、ノキアはイギリスで研究活動を行いながら、アメリカの最先端技術やマーケティング手法、日本の顧客満足思考を学び、経営に生かすことでグローバル経営に成功しています。

このように自国にないものでも、グローバル展開する先の国にある知識や技術を生かして、世界のマーケットに出て成功することができるのです。

こうしたグローバル経営戦略はどのような点がよいのでしょうか?

メリット

このグローバル経営戦略論は、これまでの経営戦略と比較して、以下の2つの点で優れているといいます。

国ごとの競争環境の差に対応していける

世界を一つのマーケットと考え、標準化した戦略を各国に展開できる

一方で、この本が発表された2003年から世界のマーケットは変化し続けているため、以下の点が懸念されています

懸念点

組織や構造を標準化することで、大きな変革期にある世界マーケットに対応できるか疑念がある
よりスピード感や柔軟性を臨機応変に求められる可能性がある

日本のグローバル展開の課題

先にも触れましたが、日本国内のグローバル企業はまだまだ自国本意であり、自前主義が強い傾向にあると著者はいいます。

行動経済成長期にあっては日本製品は価値が高く、小さな国でありながらグローバル経営に成功したといえるでしょう。

しかし、そのころの成功体験が邪魔をしており、日本独自のしがらみの多い大企業は、市場の大きな変革期についていけているとは言い難い状況にあります。

■日本の3つの課題
1、日本のやり方がベストという考えを捨てる
2、自国で完結しようとせず海外アウトソーシングを生かす
3、海外の知識や技術を柔軟に取り入れる

日本企業のなかにも、すでにグローバル経営理論を取り入れ、実践している企業もあります。

しかし、本社の考えてグローバル展開を進めたいという古い思考のまま、革新の扉を開けずにいる企業も多いのです。

しかし、加速する世界のマーケットの変化についていくためには、迅速な組織の変革が必要であるとこの本は伝えているのです。

日本企業も理解するべきトランスナショナル経営の時代

『グローバル経営入門』には、ほかにも

  • コンテントとプロセスの両面を融合したグローバル経営戦略論
  • グローバル経営の組織論
  •  グローバル統合・ローカル適応の論理

などが紹介されています。

近年のスピーディーに市場が変化する時代だからこそ、そこで実現できる新しいサービスや、その展開の仕方を見直す重要性があるんですね。

さらに、組織づくりやグローバルとローカルとの関係性の見直しも重要だといえるでしょう。

グローバルとローカルの関係

グローバルとローカルの関係について、私は外資系企業が日本に支店を出す際の実情について取材した経験があります。

これまでの外資系子会社は、意思決定権や人事などがすべて本社や本社からやってきた本国に人材にあり、日本の社長は経営部長のような役割であるのが一般的というのが実情です。

そんななか、近年、日本の社長に決定権を持たせ、日本市場で成功するやり方を日本側で立て、上層部の人事決定権も日本国内に持たせる手法で成功しているのです。

本で紹介されている「トランスナショナル経営」に通ずる部分であり、日本企業が海外進出する際も、日本のやり方をそのまま持ち込むのではなく、その国の強みや知識・技術を生かしたグローバル展開が有益という考えには非常に納得感がありました。

グローバル企業は迅速に変化する必要がある

また、すでにグローバル展開している日本の大企業とのお付き合いもありますが、社内には非常に保守的な流れが残っており、何かを作るにも過去のしがらみに縛られて思うようなことが実行できないという実情があります。

日本はこんなに小さな島国でありながら、技術と高品質なモノ造りで経済的な成功を収めました。

しかし、世界のマーケットの変化は急激であり、日本の企業が世界のトップにあまり見かけなくなったことは誰もが認めざろうえない事実です。

『グローバル経営入門』は、初版は2003年ですが、日本企業はまだ時代に即したナショナル経営がまだ不十分です。

デジタル時代の到来は消費者ニーズにも大きな影響を及ぼし、過去の栄光だけでは到底生き残れない世界になっています

さらに新型コロナウイルスの世界的流行によって今後も市場の変化は加速していくでしょう。

世界マーケットの変化にはポジティブな側面も

ただ、こうした変化はネガティブなわけではありません。むしろ、大きな財力を持たない企業であっても、今後はグローバル展開で大成できる可能性が増えています

『グローバル経営入門』には、豊富なデータに基づくグローバル経営理論が紹介されています。

市場を世界にひろげ成長を加速させていきたい企業の関係者や、日本企業をもっと海外で成長させたいと考える投資家の方は、ぜひ一度、『グローバル経営入門』を読んでみてはいかがでしょうか?

〈今回ご紹介した本の購入はこちらから〉

グローバル経営入門 (マネジメント・テキストシリーズ)

日本経済新聞出版
2003/11/1
単行本(352ページと分厚め)

【目次】

第1部 グローバル経営の論理

第2章 グローバル経営の戦略論
第3章 グローバル経営戦略の諸側面
第4章 グローバル経営の組織論
第5章 本社——海外子会社関係とその変遷
第6章 グローバル統合・ローカル適応の論理
第7章 多国籍企業の革新モデル:トランスナショナル経営論とその後

第2部 グローバル経営の革新

第8章 グローバル・イノベーションとナレッジ・マネジメント
第9章 グローバル R&D マネジメント
第10章 グローバル戦略提携のマネジメント

 

第3部 グローバル経営環境とマネジメント

第11章 グローバルな人的資源戦略
第12章 リージョナル・マネジメント
第13章 グローバル経営における文化

 

終章 グローバル経営の課題
コラム ほか